Blender Sculpting
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1. はじめに
1.1 Digital Sculpting
BlenderのSculpt Modeはそれだけで単独のソフトウェアに匹敵するほど高機能である。Digital Sculptingは多くのブラシツール、マスク機能、自動メッシュ分割(Dyntopo)、リメッシュ等を利用しながら適切な作業プロセスで行う必要がある。メッシュ構造の最適化やリトポロジーを行わないとアニメーション制作やゲーム制作のアセットとしては利用できないことが多い。ポリゴンモデリングと比較して造形の自由度が高い反面、メッシュの最適化を意識しながらモデリングを行う必要がある。
https://gyazo.com/6d317c48223c29f9efe4790fb7e52d82
参考
1.2 上手な人の手順を見て覚える
アナログでもデジタルでも造形には目的となる形状に至るプロセスには意味がある。アナログ造形と比較してデジタルには比較的自由度はあるが、ポリゴンで構成されている3Dオブジェクトは粘土造形や木彫のように素材(ポリゴン)の特性を理解して進めなければ、ポリゴンが崩れて元に戻せなくなり失敗となる。上手なDigital Sculptingのプロセスを見ることで自然と上達するのはアナログ造形と似ている。
下映像はBlenderではなくSculptisのDigital Sculpting映像。ソフトウェアは異なっていてもSculptブラシは似ているので制作プロセスは参考になる。
https://www.youtube.com/watch?v=6DNRg6pdNeE&t=1s
Sculptrisの学生作品事例。Digital Sculptingは立体造形経験があればクオリティの高い作品が制作できる。デジタル or アナログに限らず立体造形の特徴を捉える訓練が必要であり、そのスキルは観察と多作によって養われる。
https://gyazo.com/d75fb0abf683492e3e20c2f7ad7617ba
1.3 スカルプトモデリングの位置付け(リトポロジーの必要性)
3DCGの一般的なポリゴンモデリングでは、いかにポリゴンを少なくしながらディティールを維持するかを考える必要がある。形状によってもポリゴンの組み方のレシピがあり、複数の手法を習得した上で、対象の形状に最適なモデリングができる能力を身につける。これがポリゴンモデリングを習得することのハードルでもあり、挫折する理由にもなる。
一方、スカルプトモデリングでは、ポリゴン数を意識せずに、造形だけに集中してモデリング行うことができる。一般的なポリゴンモデリングとは逆に、ポリゴンを増やしながら(Remesh、Dyntopo)行う。そのため、スカルプトモデリングで作成されたモデルデータはそのままでは3DCGアニメーションやゲームモデルには利用することができない。スカルプトモデルを下地として、ポリゴンを貼りなおすリトポロジーという作業を行ってポリゴン数の少ないモデルを作成する。3Dスキャンしたモデルも高ポリゴンなのでリトポロジーを行う必要がある。
リトポロジーは前述のポリゴンモデリングと同じく、造形のディティールを維持した効率的なポリゴン貼りを行うため、経験を必要とする作業だが、近年はリトポロジーを自動化する機能も増えている。
https://www.youtube.com/watch?v=X2GNyEUvpD4
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2. 土台オブジェクト(高ポリゴン)の準備
ここではUV Sphereをベースに土台となるオブジェクトを作成する。
2.1 UV Sphereの追加
Blenderの新規ファイルを作成して、元のCubeは削除しておく。
SHIFT+Aで表示されるメニュー > Mesh > UV Sphereから追加する。
https://gyazo.com/480a80879a22114affd6696d7ff3c40c
https://gyazo.com/567b5475d3bb12a9f5ca5d2bb5032ae8
2.2 ポリゴン数の表示
Viewport Overlays > Staticsにチェックを入れる。
https://gyazo.com/8accf5250ee5d9b79b61afb543b00313
Viewport左上にElementsやTriangles(ポリゴン)の数が表示される。
https://gyazo.com/a6079e27c706a9d1c1b4bb010943f797
2.3 メッシュ分割(Multiresolution Modifier)
似た作業はSubdivision Surface ModifierやSubdivideでも可能だが、ここではMultiresolution Modifierを用いてメッシュ分割を行う。
Sphereを選択した状態でAdd ModifierからMultiresolutionを追加する。
このままでは何も起きない。
https://gyazo.com/058d869e013be65a056a3fca8265693e
MultiresolutionパネルのSubdivideをクリックすると、ポリゴンが分割される。
3,968 Triangles。
https://gyazo.com/5f9213f7ec367773da40d8c156fb8240
Subdivideを更に4回繰り返す。
1,015,808 Triangles。
https://gyazo.com/64ffd66ecbc4f3f36cd24050bf0b64fc
今回はあくまで実験用であり、通常ここまでポリゴン数を増やして制作することはなく、RemeshやDyntopo(動的メッシュ分割)を使いながら部分的にポリゴンを増やして造形していく。
2.4 Smooth Shading
UV Sphereを選択した状態で右クリックしてShade Smoothをクリックする。
パッと見は滑らかだが、ズームインしてSculptingするとポリゴンの区切りがわかる。
ポリゴンが荒い状態で作業してもよいが今回は実験として滑らかな状態で進める。
https://gyazo.com/d466dba0b587d2b51eef8e859d4d2bbd
2.5 MultiresolutionとSubdivision Surfaceの違い
両方ともポリゴン分割するModifierとしては似ているが、Subdivision Surfaceでは元のポリゴン数でしかSculptingできない。Subdivision SurfaceやEdit ModeのSubdivideではApplyすることでSculptingが可能だが、不可逆編集でLevelを戻すことはできない。
一方、MultiresolutionではSculptモードに最適化されており、ApplyしなくてもSubdivideしたポリゴン数でSculptingが可能。Sculpting後にSubdivideのLevelを変更することもできる。その他にもSculptモードに適した機能が用意されている。
参考
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3. 様々なSculpt Tools
3.1 ツールバー
ツールバーは右端をドラックすることで2列表示、テキスト表示有りに変更できる。
最初のうちは、アイコンだけで判断つかない場合はテキスト表示の方がわかりやすい。
https://gyazo.com/bef325f5c365a8b43959dc92cf7c236a
全部で42種類のツール(Sculptブラシ)が用意されており、全てを一度に覚えることはできないので、以降主なものだけ紹介する。
3.2 Draw
https://gyazo.com/cc01a9e9d1f1d5bfd70fa3554fa0662e
LMBでドラッグするとブラシサイズで盛り上がる。
https://gyazo.com/7f0ae1ac2fd5118786ca3df3289f6b00
3.3 ブラシの反転
Drawブラシのまま、Cmd(Ctrl)を押しながらLMBドラッグする。
Draw効果が反転されて凹んだ状態となる。
https://gyazo.com/e26213896aa9de6f8b9e48685cd889a7
3.4 ブラシサイズと強さ
3.4.1 UI上部オプションで変更
https://gyazo.com/c5597326ff9b2d9667ac95843b634139
3.4.2 右クリックメニューで変更
https://gyazo.com/a5f5883c70cb4dd258993f110185aa66
Auto-Smoothを上げると柔らかい感じになる
3.4.3 ショートカット
F:Radius(ブラシサイズ)
SHIF+F:Strength(強さ)
ショートカットを使うことで、カーソルの位置でブラシサイズと強さの変更を行うことができる。
下図はStrengthの変更。
https://gyazo.com/64f7120fcb324d225967853aa44577cf
参考
3.4.4 ブラシサイズの相対的変化
ブラシサイズは3D Viewportをズームイン/アウトしても変わらない。そのため、ズームアウトしたときにオブジェクトの見た目のサイズが小さくなれば、相対的にブラシサイズが大きくなる。ズーンインで細かい作業を行い、ズームアウトして大きな造形を行うことでブラシサイズの調整回数を減らして効率的に作業を行うことができる。
下図のブラシサイズは両方同じ。
https://gyazo.com/078fcad075f2d0e49f82d8d4a92c74c5
3.5 ブラシの影響する度合い
ブラシの効果がどのようにオブジェクトの変形に影響するかはブラシのサイズや強さにもよるが、対象オブジェクトのメッシュの細かさが大きく反映される。メッシュが荒いほど変形が滑らかになり、細かい造形表現を行うことができる。対象オブジェクトに対してどこまで細部の造形を行うかによって、準備段階でのメッシュ分割を行っておく必要がある。もしくはDyntopo機能で動的にメッシュ分割を行う方法もある。
下図はUV Sphereに対するDrawブラシによる形状変化。
左からSubsurfなし、Subsruf Level1、Subsurf Level2。
https://gyazo.com/3eee410a2f58f3c7b9991e756c8e1492
※Multiresolution Modifierのプレビューレベルを変更することでも分割数と造形度合いを確認できる。
3.5 Draw Sharp
https://gyazo.com/e4563ca3f9bcd1ae116c890516bb868f
Drawよりもシャープ。
Drawは盛り上がるがDraw Shapは溝ができる。
DrawとDraw Sharpだけでもレリーフ表現が可能なよく使うツール。
https://gyazo.com/c58daf6d158d125404d9429c3b1bd08a
反転した場合。
https://gyazo.com/a05a959687211b87f73dd761e07dad4a
3.6 Infrate(膨張)
https://gyazo.com/b3932e4a36cfe950e23633cf6b682d7d
Drawよりも強く盛り上がる。丸みを帯びて膨張している造形。
https://gyazo.com/3ee90be09ebb05619bbba7af3b953b8e
下図は反転した状態。ボールがめり込んだような造形。
https://gyazo.com/43f0d4354655644a9529764ab240014f
3.7 Crease(溝)
https://gyazo.com/31b06142ed54eb3740fd6001aefd7bf5
Strengthを最大にして、ブラシサイズを小さくした方が効果的。レリーフを彫るような造形。
https://gyazo.com/d8d864c217f3ec81b7b1bff16a308586
下図は反転した状態。
https://gyazo.com/6fcdd42f1a172eb7604f987e100b52fc
3.8 Pinch(つまむ)
アイコン間違い
下図ではDrawで盛り上げた部分にPinchを使ってエッジを立てている。
https://gyazo.com/b8e627c62fa47a10228da091dc8bbaa7
3.9 Grab(つかむ)
https://gyazo.com/7931266c1970414b55d8c83eacdb24cb
Grabではメッシュを大きく変形することができる。ブラシサイズは大きくして行うことが多い。
https://gyazo.com/4d298082947e2653ad1522cf318ed080
3.10 Smooth
https://gyazo.com/4db3ed209aef0ccd398623ba9241c857
下図左の状態にSmoothブラシで下図右のようにぼかすことができる。
他のツール利用時でもSHIFTキーを押すことで一時的にSmooth機能となる。
https://gyazo.com/387df3483829186661003bc3ae3edfce
3.11 Flatten(平ら)
https://gyazo.com/928016a8a815a171e877e77b84cda54c
下図はInflateで盛り上げた後、Flattenで平らにした状態。
https://gyazo.com/4d22df11030a49b12760f9cb9df80db6
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4. Mirror(Symmetry)
動物は基本的に左右対称であるものが多い。その場合はまず左右対称で作成してから左右の違いを追加していく。個人的にはSymmetry使わないで作成する方が有機的で面白いとは思うが作業効率は下がる。
Mirror機能は、Object Modeを除いて、Sculpt Mode、Edit Mode等のモードで可能。
4.1 Axis表示
Sculpt Modeでは初期状態でAxis(座標軸)が非表示の状態だが、説明しやすいようにViewport OverlaysからXYZのAxis表示する。
https://gyazo.com/3646c788c90c1a08539f36c549d13675
4.2 Mirror設定方法
Viewport右上の下図アイコンでMirror設定を行うことができる。
下図ではX方向(YZ平面を基準)のMirrorが設定されている状態。
https://gyazo.com/64f9245266f9d389f344705cb3b36c7d
Mirror状態ではカーソルの他に設定した対称の位置に青点が表示される。
この青点を目印にスカルプトを行う。
https://gyazo.com/77e9505137d7b831596df67663d9bcb3
4.3 X方向の場合
https://gyazo.com/7a4340b38a1837b0f4dbb92d9495fd46
https://gyazo.com/4ee884cf9658eab3ec65323bc19342e0
4.4 XとY方向の場合
https://gyazo.com/790014bb2704fc6e5282852a97ccc4c7
https://gyazo.com/22114e8fcfbfe4ee4acf1383928fb0ed
4.5 XとYとZ方向の場合
https://gyazo.com/5ddc8b0608b9c76dd05aecb77b7d6263
https://gyazo.com/99440e6a2f56c7f3a645407d37094264
参考
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5. 口の作成例
Sculpt Toolsを利用して口を作成する方法を紹介する。
ここで紹介している方法はあくまで一例。以下URLの方法がもっとスマート。
5.1 X方向Mirror
X方向のMirrorを設定。
https://gyazo.com/7a4340b38a1837b0f4dbb92d9495fd46
5.2 口のライン
Draw Sharpをブラシサイズ小さめ、Strength強めで描く。
https://gyazo.com/8d8d6d3c16bf00cf3d1e6ee11604cb26
5.3 唇の作成
DrawでStrengthは弱めで徐々に造形していく。
必要に応じて、SmoothやDraw Sharpで整える。
後加工も多く行うので、ある程度に留める。
https://gyazo.com/b5bb52c1aecf434c5beb25dc33b2bae6
5.4 人中の作成
Draw反転で鼻下の人中(じんちゅう)の作成。Creaseでも可能。
https://gyazo.com/68eecfc40c637dc9397deaff574609b1
5.5 微調整
https://gyazo.com/cfa4ca32f18d492d79f6d66278c40a9f
5.6 鼻作成(おまけ)
https://gyazo.com/b5668cd9481c936fb2d780024f7b7f89
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5. Dyntopo(紹介のみ)
※Donutチュートリアルでは扱っていない
Dyntopo = Dynamic Topology(自動細分化機能)はSculptブラシの部分にだけ細分化を発生させる機能。
https://gyazo.com/c6509f93e433660d66cca4c3baf5af2c
元のメッシュ数に依存せずに設定した分割割合で自動的にメッシュ分割を行うことができる。一方、無限にメッシュが細分化されるのである程度作業を行った後はRemeshを行いながら進めるかモデリングの最終段階に利用する。そのまま進めるとPCに高負荷がかかりBlenderが落ちる可能性もある。
https://gyazo.com/b9d945ea6e49d54b0917d585caf6f593
Dyntopoを含めてSculpt Modeで作成したオブジェクトは、そのままではデータ量が重すぎてアニメーション制作やゲーム用途には使えない。最終的にはリトポロジーというプロセスで形状を維持した状態でメッシュ数を抑えたオブジェクトに再構築するのが一般的使い方。3Dプリンターで出力する時はそのまま利用する場合もある。
参考
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6. Remesh(紹介のみ)
Remeshはポリゴンを指定の分割割合で再構築する機能。
Remesh ModifierもしくはSculpt Modeでrでグリッド幅設定、Ctrl+Rで確定
https://gyazo.com/937adc9f61337ef7df59354f92703e13
Remesh前(464,646 triangles)とRemesh後(14,644 triangles)
https://gyazo.com/261b9aeba65582117edd9e0d86f69fef
Object Modeで確認すると細かい造形部分が荒く崩れている。細かい造形を行う前段階でRemeshしてから細部の作業を行う方がよい。Blenderで部分的なRemeshが可能かは未確認。
https://gyazo.com/0cd113b61f4c67760a495779144847b9
今回の場合は単に全体のディティールが下がっているが、例えば、メッシュを大きく変形させたことでメッシュが荒くなっている部分を細分化するという利用用途が多い。Sculptの途中段階で利用する位置づけであり、アニメーションやゲームのアセットとして利用する場合は最終的にリトポロジーする必要がある。
参考
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参考
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